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大学入試改革。 論述問題を増やし採点に時間をかけるべき。

前回の記事で、英語の入試に民間試験が利用できるようになるのはいいと主張しました。

受験料が高い、業者の数が多すぎるという問題は解決する必要がありますが、生徒たちが各大学の出題傾向に翻弄されることも、悪問対策に追われることもなくなります。受験のテクニックを教える塾に通わせる必要もなくなり、保護者にとっても朗報です。

そしてなにより民間の試験は、採点に時間をかけることができるため、論述の問題を出すことができ、センター試験や大学入試に比べて、生徒の思考力を測ることができるようになります。

高校生の学力を、センター試験や一部の私立大学のように、採点が簡単な方法でのみ測るのは時代に即していません。
これからの時代、暗記した正解を早く答えるはスマホがやってくれます。

AIに置き換われない能力を高校生のうちに育ませたいものです。

長男が受けたIB(国際バカロレア)は、その点、時代の先端を行くものでした。
こんなに高校生の思考力や人間性を伸ばす教育があるのかと衝撃的でした。

さて、海外の大学入試では、論述がおおいため、採点に時間がかかります。

IBでは、試験期間は3週間にわたり、スコアがでるのは最終試験の1ヶ月半後です。

シンガポールやイギリス系のIGCSEのAレベル(高校卒業レベル)の試験は2ヶ月にも及びますが、結果が出るのは、最後の試験から2ヶ月あとです(イギリスに送っているからだそうです)。

アメリカのSATもマークシートではないか、という人もいるかもしれませんが、アメリカの大学入試は高校1年生からスタートしています。高校1年生からの毎日のテストや提出物などが成績表にGPAとして克明に記録されていますし(こちらの記事をご覧ください)、志望大学に提出するエッセーの準備も大変です。そして、アドミッション側も入念に時間をかけて審査します。

繰り返しますが、一問一答式の採点が簡単な方法で大学受験生の思考力は測れません。
試験問題が変わらないから高校教育の改革も進まないのです。

これからの時代に必要な思考力を伸ばすのであれば、論述は欠かせません。
どれだけ多くの志のある先生方が、新しい時代に即した教育を実践しようとも、大学入試が共通一次時代と変わらなければ、教育改革は進まないのです。

暗記を否定しているわけではありません。教養は大切です。
でも、その知識で何をどう考えるかが大切なのです。

新しい大学入試の共通テストは、秋に行い、論述問題を出し、採点には1ヶ月以上かけて、生徒の学力や人間性を測るべきだと思います。

追記:今年、私がアメリカでコミュニティカレッジの入学試験を受けた時、数学と英語の試験をコンピューターで受けたのですが、最後の問題のエッセイ(500語程度)を書き終えてから数分で採点結果が出て驚きました。ITの力を使えば、ある程度の採点ができるのでしょう。


IB説明会のスライド 
IBの試験問題は、付け焼き刃では対応できません。2年間学んだこと、身につけた力が問われるのです。
こうした問題に対応するため、長男は10冊の課題図書を何度も読んでいました。



2020年度大学入試改革  受験英語からの脱却



2020年の入試改革はまだ課題はあるものの、日本人を受験英語から解放するため、世界最低の英語力の汚名を晴らすために、決して止めてはいけないと思っています

2020年からは、センター試験ではなく、検定試験のスコアが評価されるようになります。
これは朗報です。なぜなら、日本人の英語を「壊した」理由のひとつは、受験英語だと思うからです。
次の問題をみてください。現在、進学校で実際に出されている試験の一部です。
英語を使って仕事をしていて、英検1級を持っている私はほとんど解けませんでした。
ネイティブスピーカーと結婚した友人たちも答えられず、ネイティブスピーカーも首をひねった問題が多い中、全部答えられたのは、高校の英語の先生方だけでした。



1番目は There being 2番目は less  3番目は impossible to deny 

それを50分の試験時間にこのような問題を70問も解かねばならないのです。
つまり、一流大学を目指す高校生は、こんな難解な表現を暗記させられているのです。

頭痛や吐き気がするような問題はまだまだ続きます。




It looks like it is going to rain でいいのに、二つのかっこに悩みます。
この答えはas though
likeを硬く言うときに使うそうですが、日本語訳は口語調。

2番目は short
確かにcome short of という表現はありますが、口語ではYour work is below my expectation で十分ですし、そちらの方が通じると思います。
この表現は、就職してビジネスレターに慣れた頃に書ければ十分です。

3番目は until だそうです。
In one more day, I'll be free, でいいのに。

英検1級より難しい高校生の受験英語。わざとひねった表現ばかり。
これを基本表現も身についていない2級-準1レベルの生徒たちが一生懸命覚えるのです。
一生懸命勉強する優秀な生徒ほど英語が話せなくなっていきます。

書店の英語コーナーに「ネイティブはこんな表現を使いません」系の本が多く売られているのもそのせいでしょう。
英語は本来楽しいものです。
こんなことばかりさせられたら嫌いになっても不思議ではありません。

もう一つ言わせてもらうのが、センター試験で必ず出される発音問題



この中から発音が異なるものを選びなさい。

1 argue  garden hardly  scarcely

2   approach, broadcast, coat, throat

帰国子女の次男がいつも落としていた問題が発音問題とアクセント問題です。
ネイティブに見せても苦戦します。
でも、発音のいい人が正解できない発音問題って変だと思いません?

英語表現の時間は、一生使わないような難解な英語表現を覚えるためにあるのではなく、基本的な正しい文法で、自分の考えを表現する時間であるべきです。
「思考力をつける」それが英語の入試改革の本質です。

その点で、英検などの外部検定は優れています。
発音、アクセント、穴埋め書き換え問題はありませんし、英作文は以下のような問題が出題されます。採点に時間が取れるから可能なのでしょう。


与えられたトピックについて作文しなさい。

「動物を動物園で飼育するのは許されるか。」

いかがですか? 

論理的に文章を組み立て、説得力のある文章が書けなければいけません。

使いもしない奇問難問を覚えるより、よほど役に立つ勉強です。これが英語表現の授業のあるべき姿です。

英語の試験は、センター試験や大学の独自の問題をすぐにやめて、英検とTOEFLなどに絞るべきだと思っています。TOEICはビジネスマン向けでこれからアカデミックな英語を大学で学ぼうとする大学入試向けではありません。



しかし、民間の検定試験導入にはまだ課題があります。東大が2020年の入試で独自の方針を打ち出したのも、以下の問題が解決されていないからです。

漢検の受験者数が伸びて受験料が下がったように、英検も値段が下がることが求められますが、成績提供システムのグループに入るためには、筆記試験と同日にスピーキングのテストも行わなければいけないらしく、それでは値段が上がってしまいます。
改革の方向性はあっているのですから、もっと安くできる方法を考えなければなりません。

今、私の生徒たちは、1週間後の英検試験に向けて、英文を読んだり、語彙を覚えたり、英作文をしたり、リスニングを鍛えたりしています。とても正しい勉強です。

一生使わないような受験英語を覚えるのではなく、確固とした英語力をつけていく生徒たちの背中をどんどん押しています。

大学がこのような問題を出さないと表明してくれれば、学校、塾、大学受験生は、この単元に注いできた多くの時間を、語彙や読解、英作文やリスニングなど今後必要になる分野に力を注ぐことができます。



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