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指導者の立場から見たStanford e-Japan

スタンフォード大学が日本の高校生向けに提供するオンラインコースStanford e-Japanの募集が始まっています。
三男がこの夏まで5ヶ月間受講しましたが、実に素晴らしいオンラインコースでした。

フランス、シンガポール、アメリカに駐在しながら3人の息子を育てた留学企画引率者、英語指導者の視点から、このコースの素晴らしさをご紹介したいと思います。

どんな生徒が受講しているの?


現在高2の三男は、アメリカの現地中学校に2年ちょっと通い、英検1級を持ち、去年は、World Scholars Cup(ディベート、クイズ、エッセイのチーム戦)で世界決勝大会まで進んだのですが、このコースに合格した生徒たちには、三男よりも英語力が高い生徒が何人もいて、非常に知的な英語を流暢に書いたり話したりしていました。一方、英語力が彼ほど高くない生徒もいました。選考では、英語力以外の能力も見られていると思います。

このコースに求められる生徒は、スタンフォード大学の先生方による素晴らしい授業を聞いて理解したいという受け身な姿勢ではなく、それ以上の意欲とGRIT(やり抜く力)を持ち、好奇心を持ってどんどんリサーチをし、ディスカッションに積極的に参加し、独創的な視点や深みを与え、互いに高め合いながら、授業に貢献できる生徒なのではないかと推測します。

どんな内容?

内容は、三男がNoteで共有しています。



誰が教えているの?


このプログラムを考案されたWaka Takahashi Brown先生は、Stanford大学で卓越した教師賞に送られるエルギン・ハインツ賞を受賞している世界トップクラスの先生です。

カリキュラム・ユニットを作る達人で、このコースでも、受講生は与えられた授業以上に、自らのリサーチや他の参加者との意見交換や最終論文から多くを学ぶように設計されています。遠隔アクティブラーニングの最高峰の授業でした。

従来型の一方的な授業では、10を与えても、生徒が2しか記憶に残らないため、復習テストが必要なのに対し、Waka先生のアクティブラーニングは、2-3を与えれば、生徒たちが自律的学習者になるため10身につき、その後も興味がとまらず、20にも30にもなる仕組みなのです。

言うまでもないことですが、親が教育に期待することは、どれだけ与えてくれるか、と言うことではなく、どれだけ子どもを成長させてくれるか、です。
IB教育もそうですが、良い学びをしている時、息子たちは「大変、でも楽しい」と目の輝かせながら取り組んでいます。

今の時代、先生の役割は、教えることよりも、いい課題を与え、生徒に考えさせ、アウトプットの機会を与え、その取り組みや生産物を評価することだと私は考えます。
(足元にも及びませんが、今回、2ヶ月半で、7人の中高生を準1級に合格させた私のオンラインコースでも、私はほとんど教えませんでした。しつこいくらいのフォローはしましたが。)

どこがすごいの?


内容もさるものながら、教育者の視点から感心したのは、困難なコースを高校生に最後まで意欲的に取り組ませる工夫が随所になされていたことです。(今回はコロナ休校のおかげもあり、脱落者が一人もいなかったそうです)

許可をいただいていないので、詳しい資料は訳せないのですが、他の授業でも応用できる点を列挙します。授業設計の参考になれば幸いです。

コース開始前
  • 5ヶ月間のコース全体のシラバス、11回分のモジュール、各回の事前課題など全て、コース開始前に示されている。生徒はスケジュールを事前に調整でき、先のテーマにもアンテナを貼って生活することができる。
  • 各回の宿題の提出(25%)、ディスカッションへの貢献度(25%)と、最終論文(50%)で成績がつけられるが、その評価基準(リューブリック)が明確に示されている。
  • 最優秀生徒は、スタンフォード大学で行われる授賞式に保護者付きでご招待(しかも渡航滞在費の補助金付き)という、とてつもないインセンティブが与えられている。(柳井奨学金に感謝!)
コース中
  • 最初の授業では、事前にCANVASという非同期ディスカッション用の掲示板に自己紹介文や短い動画をあげる宿題が出ていて、自由にコメントすることもできる。初回の授業の前から、すでに趣味の話題などで盛り上がっていて、参加者のワクワク感や心理的安全性を高める工夫がされている。
  • 毎回、土曜日の授業の4日前の火曜日までに、講義映像や資料を見て宿題を先生に提出する。その後、次の日曜日の夜までCANVAS掲示板に最低3回は投稿することになっている(締め切りギリギリに3回出すと評価が下がる)。ディスカッションのトピックはあらかじめ準備された質問(プロンプト)についてでもいいし、事前課題に取り組んで疑問に思ったことでもいい。毎回、非常に活発な意見交換がなされ、土曜日の授業当日までには、テーマに関する基礎知識や好奇心がかなり高まっている。
  • 土曜日のZOOMによる授業で、 講義映像の先生のライブ授業の時は、直接質問をすることもできるし、スタンフォードの学生と話し合える日もある。
  • 授業が終わった後も日曜日の夜まで引き続きCANVAS掲示板でディスカッションが続く。Waka先生はその投稿を全て読み、必要であれば適切なコメントを入れる。
  • 毎回の課題の提出物に対する先生のコメントが深い示唆に富んでいて、生徒は自分の課題をきちんと読んで評価してもらっていることを実感し先生への信頼感を高める。
  • 課題内容と、ディスカッションの貢献度が、数日以内に5段階で成績がつく
  • わからないときは、いつでも質問に答えてもらえる。(三男だけでも、毎回質問をしている)地理的距離を感じさせないコース。
これまで、シンガポール、アメリカ駐在中も息子たちには素晴らしい教育を受けさせることができましたが、今回は、息子が自宅で受講していたため、いつも以上に垣間見ることができました。



帰国子女やインターの高校生のみならず、英語で、リサーチやディスカッションをしながら世界最高の授業を作りたい、知的好奇心に溢れる高校生は、ぜひ挑戦してみてください。
日本語の募集案内はこちらです。


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