個性や能力に合わせてオーダーメイドの授業が受けられる生徒は幸せ者だと思います。
今日、Facebookである日本の校長先生が
「もっと経費をかけて教育環境の質を上げる一方、児童生徒の学びの中身、また進級や卒業、単位認定の基準を見直し、年齢が同じなら一緒っていう概念をなくしていく。」ことを提案していらしたので、まさしくそれが実践されているこれからアメリカの中学校のコース選択制度についてレポートします。長文お許しください。
1)時間割は毎日同じ
7年生の三男の場合、月曜日から金曜日まで
1限 国語 普通クラス(必須科目)
2限 国語 普通クラス(必須科目)
3限 理科 普通クラス(必須科目)
4限 演劇 中級 (選択科目)
ランチ
5限 一般体育 (選択科目)
6限 学級活動
7限 数学 Pre AP (1年先取り)(必須科目)
8限 歴史 普通クラス(必須科目)
です。 休み時間の5分で忙しく、先生の教室に移動します。
学年によってランチタイムが違うのは、限られたスペースの食堂を分け合って使うためです。
アメリカでは、先生が生徒の教室に行くのではなく、生徒が先生の教室に移動します。
ですから、各先生の教室を訪ねると、壁一面に資料や生徒の提出物が貼られていたり、授業に使う教材がすぐに使えるようになっていたり、かなり個性的かつ機能的です。
職員室と各教室を、教材を持ちながら移動する日本の先生がお可哀想です。
1日に全教科、この枠組みが生徒の授業選択肢を広げます。
2) 必須科目は国数理社の4科目 レベルはそれぞれ3段階 実情はきっとそれ以上
7年生は4教科の必須科目と 2教科の選択科目を選択します。国語、数学、理科、社会 は必須科目ですが、
GT (Gift and Talented 英才クラス) Pre AP(アドバンス) Academic(普通クラス)
の3段階に難易度が分かれています。本人の希望と、前学期の成績で決められます。
数学はテキストも異なり、GTクラスは2年先取り、Pre AP クラスは1年先取り、Academic は在籍学年レベルのことを学びます。
理科や社会は同じテキストを使っていますが、宿題やテストを比較すると、アカデミックより、Pre AP やGTクラスは記述力や思考力が試され、宿題や試験の難易度が高いです。
GT、Pre AP, アカデミックと3段階に分かれていますが、実はその中でも生徒のレベルに合わせて、もっと分かれているようです。ですから教室の中は、本当に同じくらいの理解度の生徒たちだけを集めて授業が行われています。
これは生徒にとっても先生にとってもいい環境だと思います。
3)選択科目は2コマ 生徒の個性や能力を存分に伸ばす
4教科の必須科目の他に、2教科の選択科目を選びます。部活に近く、スポーツマンも、芸術派も、コンピューターマニアも、才能を伸ばせる仕組みです。(英文ですが、コース選択はこちらに詳しく書かれています。)
運動系
- 一般体育 日本の体育の授業に似ている。様々なスポーツを楽しむ
- Athletic 日本の部活に似ている。 選抜があり、朝練、放課後練 試合有り。
- 保健
- ダンス 初級 中級 上級
- 美術 (l ll lll の3段階)
- 管楽器 (ブラスバンド コンサートバンド シンフォニックバンドと3段階)
- 弦楽器 (これもレベルに応じて初級、中級、上級3段階)
- 合唱 (初級 中級 上級)
- 演劇 (初級、中級 上級)
- コンピューターサイエンス 初級 中級 上級
- ウェブデザイン (初級 上級)
- ロボット工学 (初級 上級)
- スペイン語 (初級 中級 上級)
- ドイツ語 (初級 中級 上級)
その他
ESL (英語が母国語ではない生徒向け)
スタディーセンター(補習 宿題を見てもらえる)
ディベート
などなど、学校のよっても提供する教科が異なります。(ビジネス、経理、調理など就業スキルが学べる学校もあります)
運動といっても選択肢は様々。
スポーツが得意で部活並みにやりたい生徒はスポーツ(Athletic)を選択し、シーズンのスポーツ競技(秋学期ならフットボール、女子はバレーボール)を学びます。トライアウトと言って選抜テストがあり、受からなければ選択することができません。上手な生徒は、朝練、午後練があることもあり、学校対抗の試合に出られます。トライアウトに受からなかった生徒や体を動かすだけでいい、という生徒ははPEという一般体育になります。
芸術も 美術、音楽、演劇が選べます。
音楽は、弦楽器、管楽器、コーラスのうち大抵の生徒は1つを選び 3年間一つの楽器を毎日練習します。選抜試験があり、上手になるとクラスレベルも上がり、コンサートに出ることもできます。そのため、個人レッスンを受けて練習しているひとも多いです。
ここで大切なことは、選択授業といっても毎日真剣に練習をします。部活のようです。
運動系、文科系、技術系などが課外授業ではなく、専門の先生方の指導のもとでカリキュラムに沿って行われています。日本のように全員がちょっとだけコンピューターを少し学ぶ、のではなく、好きな生徒は毎日かなりのレベルまで学びます。
アメリカの入試は成績(GPA)を重視するので選択科目も入試に影響します。入試に関係ないからサボる、ということはないのです。
ちなみに、日本の部活のように アメリカの先生は残業しません。(放課後、家庭教師を堂々としています。自分が受け持っていない生徒なら見ていいそうです。レートは1時間60ドルほど。これはあくまでもテキサス州の私の学区の例です。)
4)生徒は好きな教科で伸びる
日本の教育はみんな横並び。個性や得意科目が違っても、みんな同じ授業で学びます。しかし、これは大きなロスであることが、この国に来てわかりました。
簡単すぎる授業は退屈ですし、難しすぎる授業は辛いです。
何よりも生徒の理解度が異なると教える側の先生が大変です。
アメリカの教育は違います。
得意な教科はどんどん先に進むことができます。GTクラスでは中学で、高校のレベルの代と幾何を学びます。
じっくり学びたい生徒にはそのレベルのクラスが準備されています。そして、補習も準備されています。落ちこぼれることも退屈することもないのです。
勉強が得意な子、運動が得意な子、芸術が得意な子、コンピューターが得意な子、それぞれが毎日の授業で伸びていくのです。ひとクラスの人数は25人くらいで、それほど少なくもないのですが、生徒のレベルが同じなので学習効果が高いと思います。
私の息子は昨年4月に渡米しESLクラスに中途入学しました。9月にESLを抜け、演劇と一般体育が選択できるようになりました。
この時間が楽しくて楽しくて仕方がないそうです。
2期目の今学期は中級にあがり、4月公演のミュージカル「美女と野獣」の練習をしています。なんとオーディションで端役をゲット。
毎日、嬉しそうにサントラを聞いて、他の人の歌やセリフまで覚えそうな勢いです。
演劇という一見勉強とは関係ない教科で、三男の様々な能力(英語力、演技力、歌唱力、ダンス そして自信や意欲)が開拓され、伸びていくのを見るのは親として本当に嬉しいです。